あなたが抱えている症状と自律神経は、どのように関係しているのでしょうか?
自律神経と症状の関係は、自律神経の働きによる「血流」「心拍」「血圧」「呼吸」「内臓機能」などの変化を当てはめて考えるとわかりやすいです。
腰痛=腰の血流+姿勢+脳(自律神経)
体のゆがみなどによる腰やその周辺(お尻や腿やお腹など)の筋肉の過緊張による血行不良(酸欠状態)で痛みが起きます。
その痛みが脳へのストレスとなり、自律神経の乱れが起き、筋肉の血流が悪くなり、「痛みの悪循環」が起きます。
肩こり=首と肩の血流+姿勢+脳(自律神経)
肩や首のこり、痛み、関節のだるさやしびれ、力が入りにくいなどは、ストレスによって交感神経(活動モード)の緊張が続いた結果、末梢の血管が収縮し、血行が悪くなり、筋肉の痛みや動きの悪さ、しびれなどとしてあらわれます。
頭痛=頭と首の血流+目の疲れ+姿勢+脳(自律神経)
頭痛や頭が重い、頭がモヤモヤするなどの症状は、脳外科の検査や貧血での異常がなければ、偏頭痛や緊張性頭痛です。
ストレスなどで交感神経(活動モード)の緊張が続いた結果、末梢血管が収縮して血行が悪くなり、脳に浮腫が起きたり、血管が拡張したときに起きる拍動を伴う頭痛が「偏頭痛」です。
また、ストレスなどで交感神経(活動モード)の緊張が続いた結果、首から後頭部にかけての血行不良による首こりや肩こりを伴うなどの頭痛は「緊張性頭痛」です。
めまい=耳のリンパ液+血流+血圧+脳(自律神経)
ストレスによる自律神経の乱れは、内耳のリンパ液の分泌や血流、三半規管(回転性の動きを感知)や耳石器(スピードや重力など直接的な動きを感知)などの器官へ影響を与えます。
その結果、めまいやふらつき、立ちくらみの症状が起きます。
耳鳴り=脳と耳の血流+血圧+脳(自律神経)
耳鳴りは、耳と脳をつなぐ神経の異常「感音性難聴」などが原因といわれています。
ストレスにより自律神経が乱れ、難聴になり、聴力が低下すると、聴神経が感度を高め、本来は、雑音として処理している電気信号を脳が敏感に感知し、それが耳鳴りの原因と考えられています。
また、繰り返し起きる原因は、その不快感や煩わしさがストレスになるため、悪循環のシステムができるからです。
耳鳴りの治療は「気にしない脳(意識を耳鳴りに向けない)をつくる思考法」が最も有効だと臨床と自身の経験から実感しています。
私自身も耳鳴りにはかなり悩まされた経験があります。
当初は、頭の中で四六時中鳴っている「セミの鳴き声」が気になって気になって仕方なく、その煩わしさによる辛さが半年ほど続きました。もちろん、その間に耳鼻科の治療法や漢方などもいろいろと調べては試してみましたが、改善しませんでした。
その後、「症状に意識を向けないようにすることが自律神経に良い」とわかり、実践してしばらくして、次第に音が小さくなった感じになり、結果、耳鳴りが気にならなくなりました。
現在は日によって鳴っていたり、鳴っていなかったりする程度で、気にならない状態まで改善しています。
このことからも、当院の自身の経験を踏まえた「カウンセリングよる耳鳴り(頭鳴り)の改善率」は非常に高いのです。
吐き気や食欲不振=内臓の動き+脳(自律神経)
家族や仕事の心配ごと、経済的な問題や健康の問題など、複数の心配や不安が日常化すると、食欲が落ちたり、お腹の具合が悪くなったりします。
そして、胃や腸の病気ではないかと心配し、検査をしても異常がない場合は、“腸と脳の相関関係”による不調が疑われます。
脳にストレスがかかり続けると、当然、脳と密接な関係にある胃や腸の動きが悪くなるのです。
当院に来る自律神経失調症やうつ病の患者さんの多くは、胃や腸や食道の不快(逆流性食道炎)な症状を訴えられます。
息苦しさ=呼吸+胸と背中の血流+姿勢+脳(自律神経)
息苦しさの原因は“4つ”あります。
1つめは、自律神経の副交感神経(リラックスモード)が強く働き過ぎて、気管支の筋肉が収縮する場合です。
このため夜になってベッドに入ると息苦しくなる人がいます。
2つめは、肺と胃を仕切っている横隔膜が上下しづらい状態になっている場合です。
この原因は、猫背などの体の構造的な問題により、消化不良による胃のガスだまりが胃を押し上げているためです。
お腹の張りやもたれ、頻発するゲップやオナラなどもこの状態によるものです。
胃が上がることで、横隔膜が下がらなくなり、肺が下方に広がらなくなっているのです。
対処としては、施術によって胃を下げる治療(胃の周辺の組織の緊張をとる)を行います。
3つめは、姿勢の悪さが原因の場合です。自律神経の乱れが起き、背骨や肋骨などの筋肉が硬くなり、肺を囲っている肋骨(胸郭)が動きにくくなるため、充分な酸素がとり入れられないため息苦しさを感じてしまいます。
4つめは、自律神経が乱れることにより不安感が起き、「息を吸うこと」に意識が向き、逆に息を吐けない状況になり、息苦しさを感じる場合です。
不安を感じたら、「ゆっくり吐く習慣」を身につけると息苦しさは解消します。
動悸や不整脈、胸のザワつきや圧迫感=心拍+血圧+呼吸+脳(自律神経)
心臓は“自律神経の影響を受けやすい器官”です。
ストレスなどで、自律神経が乱れ、交感神経(活動モード)の緊張が続くと、心拍が速くなり、動悸や不整脈が起こりやすくなります。
特に、神経質な人や心配性の人(神経症型)は、動悸や胸の苦しさなどの症状が起きると、「このまま心臓が止まるのではないか」「心臓の病気なのではないか」と過度な心配により、新たなストレスを生むことになります。
動悸や不整脈の主な原因は、ストレス、過労、睡眠不足、不規則な生活、アルコールやタバコ、カフェインのとりすぎなどが原因だといわれています。
過度に心配することよりも、まずは生活習慣を見直すことが先決です。
喉の違和感=胃腸と食道の動き+脳(自律神経)
喉の詰まり感は、ヒステリー球や梅核気(ばいかくき)などと呼ばれています。
原因は、ストレスや不安や抑うつ状態によるもので、自律神経の交感神経(活動モード)の働きが強くなることで、胃腸の不調、喉や食道平滑筋の過緊張などが起こり、喉の奥に球があるような感覚になります。
ちなみに私は、ヨガによる呼吸法、自転車や山登りなどの運動によるストレス発散でヒステリー球は改善しました。
風邪やウイルスやがん=白血球+脳(自律神経)
私たちの体には、ホメオスタシスによる体の機能や状態を安定させる自律神経系、ホルモン系、免疫系の制御システムが備わっています。
このシステムは、それぞれの系列の機能が影響し合うことで正常に機能しています。
私たちの体に侵入するウイルスや細菌などの異物(抗原)を防ぐのが免疫で、免疫をコントロールしているのが「白血球」です。白血球は主に“顆粒球”と“リンパ球”の2種類があります。
顆粒球は細菌と戦い、リンパ球はウイルスやがん細胞などと戦います。
自律神経の交感神経(活動モード)が優位になると、顆粒球が増え、体内に侵入した細菌を攻撃します。
また、副交感神経(リラックスモード)が優位になると、リンパ球が増え、ウイルスなどを攻撃します。
健康な人の白血球は、おおよそ54〜60%が顆粒球、35〜41%がリンパ球という割合で、このバランスが崩れると、病気を引き起こしやすくなるといわれています。
この割合が崩れて顆粒球が増えすぎると、顆粒球は健康な細胞も破壊するため、がんや糖尿病などの病気にかかりやすくなります。また、顆粒球が増えると、リンパ球が減るため、ウイルスへの対抗力が下がり、風邪などにかかりやすくなります。
一方、リンパ球が増えすぎると、免疫が過剰になり、アレルギーや喘息などの症状が起きやすくなります。
つまり、単純に免疫細胞が増えれば、免疫力が上がるというわけではなく、自律神経のバランスが整っていることが条件で、顆粒球とリンパ球のバランスが保たれて、“免疫力がアップ”するのです。
不眠=脳(自律神経)
不眠を大別すると、次の“3つ”に分けられます。
不眠の方は、日中の運動不足のため、「体が疲れてないから寝られない?」と思いがちです。
しかし、実は不眠は“疲れていても寝られない”さまざまな原因があります。
①一過性不眠(自動車でたとえると、一時的にアクセルを踏み続けている状態)
明日の大事な予定など、日常的な興奮する出来事(楽しみやプレッシャーなど)や心配ごとにより自律神経が「一時的」に乱れる不眠
②昼夜逆転型不眠(不規則にアクセルを踏んだりブレーキを踏んだりしている状態)
夜勤などの変則的な働き方や30分以上の昼寝の習慣などにより、生活リズムが不規則になり、「体内時計が狂い」、自律神経の乱れから起きる不眠
③慢性ストレス型不眠(常にアクセルを踏み続けている状態)
自分や家族の健康面、経済的な問題や将来への不安など、すぐには解決できない心配ごとや不安が多重のストレスになり、寝ても覚めても心も体も休まらないために起きる「慢性的」な不眠そしてこれが一番危険な不眠です。
この状態を放置しておくと、自律神経失調症からうつ病になりやすく、さらには脳卒中や心筋梗塞などを原因とする突然死などのリスクも高まります。
自分は睡眠がとれていると思っても、日中に強い眠気がある人は眠りが浅い可能性があります。
「睡眠は量より質」が重要です。休日などに十分な睡眠時間を確保し、脳の疲労をとることが先決です。
不眠の原因は、自分では“気づいていないストレス”が隠れている場合がありますので、「カウンセリング」を受けることも治療の重要な選択肢です。
日中に眠い、寝た気がしない、朝からだるいなど、睡眠の質が低下している慢性的な不眠とあわせて、動悸やめまいなどの自律神経失調症がある場合には、深刻な病気になる前の危険なサインの可能性があります。
このように、体中のあらゆる症状が「自律神経の働き」と深くかかわっていることがわかってもらえたと思います。
生活習慣がどのように自律神経に影響を与えて、どんな症状を発症させるのかを知ることで、今後、不調の嵐のような「不定愁訴」が起きた場合、どのような対応をすればよいか、治療の道筋がある程度はわかると思います。
たとえば、パニック症になる原因は、「その“心構えや対応策”を知らないことからくる不安」がきっかけになる場合が多いのです。
自律神経失調症にならないため、また再発させないための予防としては、「正しい知識」を身につけることと、「規則正しい生活習慣」を意識することが大切です。
以上、ここで紹介している症状は、「自律神経の乱れが原因」と考えられる可能性が高いものを紹介しています。