朝になると強い腹痛で、「学校に行きたいのに、行けない…」

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男性U君 12歳中学生 治療期間 12 ヵ月

U君は中学1年生です。

朝になると、お腹がひどく痛むため中学校に通学できない状態です。

これまで小児科や脳神経外科などに通われましたが、症状が改善しないので自律神経の問題ではないかと、お母さんと一緒に相談に来られました。

U君は小学生の頃は、毎日学校に行き、サッカーのクラブ活動も頑張っていました。

しかし、中学生になり1ヵ月ほどすると、毎朝のお腹の痛みが原因で不登校になり、2ヵ月になります。

本人に話を聞くと、みんながいる教室が苦手で緊張するようです。

そうなった原因は本人はわからないということです。U君は決して、学校や先生や友だちが苦手なわけではなく、毎朝、学校に行きたい気持ちはありますが、お腹の激痛でどうしても行けない状況です。

問診するうちにその原因は学校の環境ではなく、U君の自律神経が乱れがもとで不調(腹痛)が起きていると考えられました。

その原因が「何によるものか?」がわかれば、症状は改善していくということです。

この時期の子供によくある心理状態は、親や先生などに対して、無意識にいい子でいる、いい子でいたいという、他者評価が自分の価値基準(過剰適応型)になる場合があります。

授業についていけなかったり、学業やスポーツ等の成績が振るわなかったりすると、現実の自分と理想の自分(周囲の期待に応える自分)との折り合いがつかなくなり、そのギャップが埋まらずストレスとなります。

そのストレスは、脳に機能異常(自律神経やホルモンバランスの乱れなど)を起こし、体に不調が起きます。

そして、これまでの自信が崩れていき、次第に頑張れなくなります。

U君の場合は腹痛ですが、人によって不調の場所(臓器)が異なります。

大人の場合、幼少の体験や体質、遺伝などによって不調の臓器が変わります(臓器選択性※注)。

自律神経失調症が個人個人で症状が異なり、全身におよぶ症状であるのもそのせいでもあります。

注)自律神経失調症の症状が全身のさまざまな症状におよぶ理由のひとつが、臓器選択制によるものと考えられています。
臓器選択制とは、遺伝や生まれつきの体質などにより、症状の出る部位(臓器)が人によって変わる体の特性です。
消化器が選ばれれば、過敏性腸症候群などになり、循環器が選ばれれば、動悸や不整脈としてあらわれ、呼吸器だと息苦しさなどの症状としてあらわれます。


治療は、カウンセリングと自律神経を整える治療との並行になります。

U君の場合は、カウンセリングで他者評価を自己評価にする考え方の修正を行ったり、新たな成功体験を積む必要があります。

しかし簡単には、自己評価は変えられないため、小さな成功体験を積みながら、段階的に自分に自信をつけていくことになります。

自己評価が基準になれば、周りの目(教室)も気にならなくなりますし、大人になってから、生きやすくなります。

ストレスを生むもとがなくなれば、体に出ていた症状は自然と緩和していきます。

U君は、毎日、頑張って夕食をつくっています。これは、私とU君とで話し合って決めた約束です。

お仕事で疲れて帰宅するお母さんが助かっていて、家族みんなが喜んで食べてくれるので、とてもよい成功体験になっています。

「Uは、表情が以前より明るくなって、よく話すようになった」と、先日お母さんがおっしゃっていました。

U君が学校に行ける日は近いと感じています。

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